私たちが毎日何気なく利用している橋やトンネル。これらは人々の生活や経済活動を支える、まさに社会の”大動脈”です。しかし、多くが高度経済成長期に建設され、年月とともに老朽化が進んでいます。また、常に厳しい自然環境や交通荷重にさらされており、目に見えないところで劣化が進行している可能性も少なくありません。
- 「この橋、たくさんの車が通るけど、本当に大丈夫だろうか?」
- 「トンネルの壁の向こう側、見えない部分は健全なのかな?」
こうした社会インフラの”健康状態”を正確に把握し、安全性を評価することは、事故を未然に防ぎ、安心して利用できる社会を維持するために、非常に重要です。しかし、巨大で複雑なこれらの構造物を、表面的な目視点検だけで評価するには限界があります。
そこで重要な役割を果たすのが、HOLTECHが専門とするレーダー探査やエックス線探査といった「非破壊検査」技術です。構造物を傷つけることなく、その”内部”を透かし見ることで、隠れた劣化や損傷箇所を発見し、客観的なデータに基づいた的確な安全性評価を可能にします。
この記事では、私たちの生活に不可欠な橋梁やトンネルなどの構造物において、非破壊検査がどのように安全性を守るために活用されているのか、具体的な事例を交えてご紹介します。
なぜ今、インフラの「安全性評価」が重要なのか?

日本の多くの橋やトンネルは、建設から数十年が経過し、老朽化が進行しています。これに加えて、交通量の増加や車両の大型化、厳しい気象条件などが、構造物への負担を増大させています。
以前は、損傷が表面化してから対応する事後保全が主流でしたが、それでは大規模な補修や通行止めが必要になったり、最悪の場合、大きな事故につながるリスクがありました。
そのため、現在では、定期的な点検と診断によって構造物の状態を正確に把握し、問題が深刻化する前に対策を講じる予防保全へとシフトしています。この予防保全の精度を高め、効果的な維持管理計画を立てる上で、非破壊検査による内部状態の正確な把握が不可欠なのです。
非破壊検査は、橋やトンネルをどう”診察”する?
非破壊検査は、巨大な構造物の”ドクター”のような存在。様々な”検査機器”を使い分けて、内部の健康状態を診断します。
橋の床版(車が走る部分)の診断
HOLTECHのレーダー探査は、橋の床版内部の鉄筋の配置や、コンクリートの劣化(ひび割れ、剥離、空隙)、アスファルト舗装下の状態などを広範囲に調査するのに非常に有効です。表面からは見えない劣化を早期に発見できます。
橋の柱や梁(橋脚・橋台)の診断
コンクリートの強度を推定したり(反発度法、超音波法など)、内部の鉄筋の状態をレーダー探査などで確認します。重要な接合部など、特に詳しく見る必要がある場合はエックス線探査が用いられることもあります。必要に応じて、コア穿孔によるコンクリートサンプルの採取・試験も行われます。
トンネルの壁(覆工コンクリート)の診断
レーダー探査を用いて、トンネル壁の厚さや、壁の背面に空洞(空隙)がないか、内部の鉄筋がどこにあるかなどを調査します。空洞があると、落盤などのリスクにつながる可能性があるため、早期発見が重要です。
その他
構造物内部の水の浸入経路の特定や、埋設されている配管等の位置確認にも活用されます。
これらの調査によって、「どこが」「どの程度」問題を抱えているのかを具体的に特定し、適切な対策へとつなげることができます。
事例で見る!インフラを守る非破壊検査の活躍
事例1:老朽化した道路橋の床版健全度調査
交通量の多い国道の橋。建設から50年近く経過し、表面には多少のひび割れが見られるものの、内部の劣化状況が不明でした。
【HOLTECHの対応】
橋の床版全面にわたり、高精度のレーダー探査を実施しました。探査データからは、表面的な見た目以上に広範囲で、内部の鉄筋の上部(かぶり部分)に剥離や空隙といった劣化が進行していることが明らかになりました。
レーダー探査によって劣化箇所が正確にマッピングされたため、必要最小限の範囲で効率的な補修計画(劣化したコンクリートの除去・断面修復、防水工の再施工など)を立てることができました。もし調査せずに放置していたら、いずれは舗装に穴があく(ポットホール)などの損傷につながり、大規模な交通規制や高額な補修費用が必要になっていた可能性がありました。予防保全の重要性を示す良い例です。
事例2:山岳トンネルの定期点検における内部調査
供用開始から数十年が経過したトンネル。定期点検で壁面にわずかな漏水とひび割れが確認されたため、壁の背面の状態や内部の劣化状況を詳しく調査する必要が生じました。
【HOLTECHの対応】
漏水箇所周辺を中心にレーダー探査を実施。その結果、トンネル壁(覆工コンクリート)の背面に、部分的に大きな空洞(空隙)が存在することが判明しました。これは、建設時の施工不良か、あるいは地山からの土砂流入などが原因と考えられました。
非破壊検査によって空洞の位置と規模が特定できたため、ピンポイントでグラウト材(充填材)を注入する対策工事が可能となりました。これにより、トンネル構造の安定性が確保され、将来的な壁面の変状や落盤リスクを低減することができました。問題が深刻化する前に、効率的かつ効果的な対策を打つことができたのです。補修効果の確認や、新たな補強が必要な場合のアンカー打設、引張試験も、HOLTECHの技術が活かせる場面です。
まとめ:社会インフラの”健康寿命”を延ばすために
橋やトンネルは、私たちの安全な暮らしと豊かな社会活動に欠かせない、大切な財産です。これらの構造物の”健康状態”を非破壊検査によって定期的に、そして正確に把握することは、その”健康寿命”を延ばし、安全性を維持していく上で、今後ますます重要になります。
HOLTECHのレーダー探査やエックス線探査は、社会インフラが抱える目に見えないリスクを明らかにし、的確な維持管理や補修計画の立案をサポートします。私たちは、調査によって得られた情報に基づき、必要となるコア穿孔や補修・補強のためのアンカー打設、その品質を確認する引張試験まで、一貫した視点で貢献できる技術と経験を持っています。
橋梁やトンネルをはじめとする社会インフラの点検・診断、維持管理、補修計画などでお困りの際は、ぜひHOLTECHにご相談ください。