
コンクリートは、私たちの社会インフラを支える重要な役割を果たしています。しかし、時間の経過とともに、様々な要因によって劣化が進行し、安全性や耐久性を損なう可能性があります。そこで重要となるのが、コンクリート内部の劣化状況を把握するための「非破壊検査技術」です。
本記事では、コンクリートの中性化、塩害、ひび割れなど、代表的な劣化現象を検出する非破壊検査技術について、それぞれの特徴や適用事例を詳しく解説します。
株式会社HOLTECHでは、コンクリート内部の劣化診断に役立つ“非破壊検査技術”を提供しております。建物の安全性や品質管理でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
コンクリート劣化の主な原因
コンクリート構造物の劣化は、様々な要因によって引き起こされます。主な劣化原因としては、中性化、塩害、アルカリ骨材反応、凍害、ひび割れなどが挙げられます。これらの劣化現象は、単独で発生することもあれば、複合的に作用して劣化を加速させることもあります。
中性化
中性化とは、コンクリート内部の強アルカリ性環境が、大気中の二酸化炭素と反応して徐々に失われ、pHが低下する現象です。中性化が進行すると、コンクリート内部の鉄筋を保護する不動態皮膜が破壊され、鉄筋腐食が進行しやすくなります。鉄筋が腐食すると、体積膨張によってコンクリートにひび割れが生じ、構造物の耐久性が著しく低下します。
塩害
塩害は、海岸地域や凍結防止剤が散布される地域で特に問題となる劣化現象です。コンクリート中に塩化物イオンが浸透すると、鉄筋の腐食を促進します。塩化物イオンは、鉄筋表面の不動態皮膜を破壊し、腐食反応を加速させるため、中性化よりも深刻な劣化を引き起こす可能性があります。
ひび割れ
ひび割れは、コンクリート構造物の劣化を示す最も一般的な兆候の一つです。ひび割れの原因は様々で、乾燥収縮、温度変化、荷重、地盤沈下など、多岐にわたります。ひび割れは、水や塩化物イオンなどの劣化因子の侵入経路となり、鉄筋腐食やコンクリートの劣化を加速させる可能性があります。
コンクリート内部の劣化診断に役立つ”非破壊検査技術”

コンクリート構造物の劣化診断には、様々な非破壊検査技術が用いられます。ここでは、代表的な非破壊検査技術について、その原理と特徴、適用事例を解説します。
電磁波レーダー法(鉄筋探査)
電磁波レーダー法は、電磁波をコンクリート内部に放射し、反射波を解析することで、鉄筋の位置や深さ、コンクリート内部の空洞や異物を検出する技術です。電磁波は、電気的性質が異なる物質の境界で反射する性質を利用しています。鉄筋探査機は、この原理を利用して、コンクリート表面から電磁波を放射し、鉄筋や空洞からの反射波を受信・解析することで、内部の状況を画像化します。
電磁波レーダー法は、鉄筋の位置やかぶり厚さの測定、配筋状態の確認、空洞やジャンカの検出など、幅広い用途に適用できます。特に、鉄筋の位置や深さを正確に把握できるため、耐震診断や改修工事前の調査に有効です。
エックス線探査
エックス線探査は、エックス線をコンクリートに照射し、透過したエックス線の強度をフィルムやデジタルセンサーで検出することで、内部の構造を画像化する技術です。コンクリート中の鉄筋や配管、空洞などの密度差によって、エックス線の透過量が変化するため、これらの位置や形状を把握することができます。
エックス線探査は、電磁波レーダー法では検出が難しい深い位置にある鉄筋や、複雑な配筋状態の確認に有効です。また、コンクリート内部の空洞や豆板の検出にも優れています。株式会社HOLTECHでは、有資格者がエックス線探査を行い、詳細な内部構造の把握を可能にしています。
超音波法
超音波法は、超音波パルスをコンクリート内部に伝播させ、反射波や透過波を解析することで、内部の欠陥やひび割れを検出する技術です。超音波は、物質の境界や欠陥部分で反射・散乱する性質を利用しています。超音波探傷器は、コンクリート表面に接触させた探触子から超音波パルスを発信し、反射波を受信・解析することで、内部の欠陥の位置や大きさを推定します。
超音波法は、コンクリート内部のひび割れ深さの測定、空洞やジャンカの検出、コンクリート強度の推定など、様々な用途に適用できます。特に、ひび割れ深さの測定は、構造物の耐力評価や補修計画の策定に重要な情報となります。
赤外線サーモグラフィ法
赤外線サーモグラフィ法は、コンクリート表面の温度分布を赤外線カメラで測定し、温度差から内部の欠陥や劣化を推定する技術です。コンクリート内部に空洞や剥離などの欠陥があると、熱伝導率が変化するため、表面温度に差が生じます。赤外線サーモグラフィは、この温度差を可視化することで、欠陥の位置や範囲を特定します。
赤外線サーモグラフィ法は、広範囲を一度に検査できるため、効率的な調査が可能です。特に、外壁タイルやモルタルの剥離、コンクリートの浮きなどの検出に有効です。ただし、温度差が小さい場合や、深部の欠陥は検出が難しい場合があります。
自然電位法
自然電位法は、コンクリート中の鉄筋の腐食状態を電気化学的に評価する技術です。鉄筋が腐食すると、コンクリート中に電位差が生じます。自然電位法は、コンクリート表面に設置した参照電極と鉄筋との間の電位差を測定することで、鉄筋の腐食の有無や進行度を推定します。
自然電位法は、鉄筋腐食の早期発見に有効であり、塩害や中性化による劣化診断に広く用いられています。ただし、測定結果は、コンクリートの湿潤状態や温度などの環境条件に影響を受けるため、注意が必要です。
打音法
打音法は、ハンマーなどでコンクリート表面を叩き、その打音の音響特性から内部の欠陥や剥離を判定する技術です。健全なコンクリートと欠陥のあるコンクリートでは、打撃時の音の高さや響きが異なります。熟練した検査員は、この音の違いを聞き分けることで、内部の状態を推定します。
打音法は、簡便で迅速な検査が可能であり、外壁タイルやモルタルの剥離調査に広く用いられています。ただし、検査員の経験や技量によって結果が左右される可能性があるため、他の非破壊検査技術と併用することが推奨されます。
非破壊検査技術の適用事例
非破壊検査技術は、様々なコンクリート構造物の劣化診断に適用されています。以下に、具体的な適用事例をいくつか紹介します。
橋梁の劣化診断
橋梁は、交通量の増加や環境負荷によって劣化が進行しやすい構造物です。電磁波レーダ法による鉄筋位置やかぶり厚さの測定、超音波法によるひび割れ深さの測定、赤外線サーモグラフィ法による床版の剥離調査など、様々な非破壊検査技術が組み合わせて用いられ、橋梁の健全性評価が行われています。
トンネルの覆工コンクリートの健全性評価
トンネルの覆工コンクリートは、地下水や地圧などの影響を受けて劣化が進行することがあります。エックス線探査による内部構造の確認、超音波法によるひび割れ調査、打音法による剥離調査などが行われ、覆工コンクリートの健全性評価や補修計画の策定に役立てられています。
建築物の耐震診断
既存建築物の耐震診断では、電磁波レーダ法による鉄筋の配筋状態の確認、コンクリート強度試験による圧縮強度の推定などが行われ、建物の耐震性能が評価されます。
マンションの大規模修繕工事前の調査
マンションの大規模修繕工事では、事前に詳細な劣化調査が必要です。赤外線サーモグラフィ法による外壁タイルの浮き調査、打音法によるモルタルの剥離調査、自然電位法による鉄筋腐食の調査などが行われ、修繕範囲や工法の選定に役立てられています。
まとめ:非破壊検査によるコンクリートの長寿命化
コンクリートの劣化は、避けられない現象ですが、非破壊検査技術を適切に活用することで、劣化の早期発見と適切な対策が可能となり、コンクリートの長寿命化に繋がります。株式会社HOLTECHは、エックス線探査、レーダー探査(鉄筋探査)をはじめとする様々な非破壊検査技術を提供し、コンクリート構造物の健全性評価に貢献しています。
本記事で紹介したように、コンクリート内部の劣化診断には、様々な非破壊検査技術があり、それぞれに特徴や適用範囲が異なります。構造物の種類や劣化状況に応じて、適切な検査技術を選択、あるいは組み合わせることが重要です。
株式会社HOLTECHでは、豊富な経験と高い技術力を持つ専門スタッフが、お客様のニーズに合わせた最適な非破壊検査プランをご提案いたします。お気軽にご連絡ください!