
なぜコンクリートに穴を開ける「コア抜き」が必要なのか?
建物の壁や床、天井といったコンクリート構造物に、円筒状のきれいな穴を開ける工事。これを「コア抜き」または「コア穿孔(せんこう)」と呼びます。
「なぜ、わざわざ固いコンクリートに穴を開ける必要があるの?」
「ただの穴あけ作業でしょう?」
そう思われる方もいるかもしれません。しかし、コア抜きはエアコンの設置といった身近な工事から、建物の安全性を評価する専門的な調査まで、非常に幅広い目的で行われる重要な技術です。
そして、ただドリルで穴を開けるような単純な作業ではありません。コンクリート内部には、建物を支える重要な鉄筋や、電気・ガス・水道といったライフラインが埋設されています。これらを傷つけずに安全に作業を行うには、専門的な知識と技術、そして何よりも正確な事前調査が不可欠です。
この記事では、非破壊検査とコア穿孔のプロであるHOLTECHが、コア抜きの目的から具体的な作業手順、そして最も重要な注意点まで、詳しく解説していきます。
コア抜きの主な目的
コア抜きは、主に以下の3つの目的で行われます。
1. コンクリート強度試験
既存の建物の耐震診断や、施工されたコンクリートが設計通りの強度を持っているかを確認するために行います。コア抜きで円筒形のコンクリート供試体(コア)を採取し、専用の試験機で圧力をかけて、どのくらいの力で破壊されるかを測定します(圧縮強度試験)。これは、建物の構造的な安全性を評価するための、非常に信頼性の高い調査方法です。(JIS A 1107「コンクリートからのコアの採取方法及び圧縮強度試験方法」に準拠)
2. 配管・配線用の穴あけ(スリーブ工事)
最も一般的な目的の一つです。建物内外を貫通する穴を開け、様々な設備を通します。
- エアコンの冷媒管やドレン管
- 換気扇やレンジフードのダクト
- 電気の配線や通信ケーブル
- 上下水道やガスの配管:新築時だけでなく、リフォームやリノベーションで新たに設備を追加する際に頻繁に行われます。
3. コンクリート内部の目視調査
非破壊検査だけでは判断が難しいコンクリート内部の状態を、直接目で見て確認するためにも行われます。採取したコアを観察することで、ひび割れの深さや幅、骨材の分布状態、ジャンカ(充填不良)の有無などを詳細に把握できます。また、採取したコアを用いて、コンクリートのアルカリ性を調べる「中性化深さ試験」など、化学的な分析を行うこともあります。
作業手順をステップで解説(探査→穿孔→補修)
安全で正確なコア抜きは、以下のステップで進められます。
穿孔作業の前に、まず「穴を開けたい場所に、切断してはいけないものが無いか」を徹底的に調査します。鉄筋探査機(電磁波レーダー法や電磁誘導法)やX線探査機を用いて、コンクリート内部の鉄筋や配管、電線管などの位置を正確にマッピングします。この工程を疎かにすると、後述する重大なリスクにつながります。
非破壊検査の結果に基づき、鉄筋や埋設物を避けられる最も安全な穿孔位置を決定し、壁や床に印(マーキング)を付けます。
ダイヤモンドビット(刃)を取り付けたコアドリルという専用機械を、アンカーボルトなどを使って穿孔位置にしっかりと固定します。機械がぶれないように強固に固定することが、きれいで正確な穴を開けるための鍵です。
注水しながらコアドリルを回転させ、コンクリートを円筒状にくり抜いていきます。注水には、ダイヤモンドビットの冷却や、削りカス(切り粉)を洗い流す役割があります。作業中は大きな音や振動が発生するため、必要に応じて防音シートなどで養生します。
指定の深さまで穿孔した後、くり抜かれた円筒状のコンクリート(コア)を取り出します。強度試験や内部調査が目的の場合は、このコアを慎重に保管・管理します。
強度試験などで採取した穴が不要な場合は、無収縮モルタルなどを充填して穴を埋め戻します。構造耐力や防水性を損なわないよう、丁寧に補修作業を行うことも非常に重要な工程です。
作業前に必ず確認すべき注意点
コア抜きは便利な技術ですが、一つ間違えれば建物や設備に深刻なダメージを与えかねません。特に以下のリスクは、作業前に必ず理解しておく必要があります。
鉄筋や埋設物の切断リスク
これが最大の注意点です。万が一、建物の骨格である鉄筋(特に主筋やスターラップ筋)を切断してしまうと、建物の構造耐力が大幅に低下し、地震などの際に非常に危険な状態になる可能性があります。
また、内部の電気配線を切断すれば漏電や火災、ガス管や水道管を切断すればガス漏れや漏水といった、二次災害につながる恐れもあります。だからこそ、穿孔前の非破壊検査が絶対に不可欠なのです。
構造体への影響
梁や柱、耐力壁といった建物の主要な構造部材に、むやみに大きな穴を開けたり、多数の穴を集中させたりすると、建物全体の強度バランスが崩れる危険性があります。穿孔径や位置は、建物の構造を理解した上で慎重に計画しなければなりません。
騒音・振動・汚水対策
コアドリルは大きな音と振動を伴います。また、冷却水が切り粉と混ざって汚水となるため、周囲への飛散防止のための養生が必須です。特に、居住中のマンションや稼働中のオフィスビル・商業施設などで作業を行う場合は、事前の告知や作業時間への配慮など、周辺環境への気配りが求められます。
コア抜きと非破壊検査の組み合わせで得られる情報
非破壊検査とコア抜きは、それぞれ単独でも有効ですが、組み合わせることでコンクリート構造物の状態をより深く、正確に理解することができます。
非破壊検査(面での情報): 電磁波レーダー探査などで、広範囲の配筋状態や埋設物の有無を面的に把握します。これにより、建物の全体像を掴み、安全なコア抜き位置を特定します。
コア抜き(点での情報): 安全な位置から採取したコアを調べることで、その地点のコンクリートの圧縮強度、正確なかぶり厚さ、中性化の進行度、ひび割れの状態などをピンポイントで詳細に確認します。
この「面」と「点」の情報を組み合わせることで、診断の精度が飛躍的に向上し、より信頼性の高い耐震診断や劣化状況の評価が可能になるのです。
安全で正確なコア穿孔はHOLTECHにお任せください
コア抜き(コア穿孔)は、単にコンクリートに穴を開ける作業ではありません。建物の安全性を深く理解し、内部に隠れた鉄筋やライフラインを絶対に傷つけないという強い責任感が求められる、専門性の高い工事です。
そして、その成功の鍵を握るのが「穿孔前の非破壊検査」です。どこに何が埋まっているかを正確に把握してこそ、初めて安全なコア抜きが実現します。
株式会社HOLTECHは、鉄筋探査をはじめとする非破壊検査と同時に、高精度なコア穿孔工事の専門でもあります。
事前調査から実際の穿孔、そして穿孔後の補修まで、すべてをワンストップで対応可能なため、お客様の手間を省き、責任の所在を明確にした、安心・安全なサービスをご提供できます。
建物の強度調査や、リフォームに伴う配管工事などでコア抜きをご検討の際は、ぜひ一度、HOLTECHにご相談ください。専門家の視点から、お客様の資産価値を守る最適なご提案をいたします。