
鉄筋探査、2大工法の違いを徹底比較
建物の補強工事や改修、設備の更新などでコンクリートに穴をあける際、内部の鉄筋や配管の位置を正確に把握する「鉄筋探査」は、安全な工事に不可欠な工程です。
その鉄筋探査で主流となっているのが「電磁波レーダー法」と「電磁誘導法」です。どちらも鉄筋を探せますが、その原理は全く異なり、得意なこと・苦手なことがあります。目的や現場の状況に合わせて工法を選ばないと、十分な情報が得られないことも少なくありません。
この記事では、非破壊検査のプロである株式会社HOLTECHが、2つの工法の違いと最適な使い分けを分かりやすく解説します。
電磁波レーダー法とは?
電磁波レーダー法は、コンクリート内部に電磁波を放ち、その反射波を捉えて内部を探査する技術です。地中探査レーダー(GPR)の一種で、コンクリート内部を非破壊でスキャンするイメージです。
原理
探査機から放射した電磁波が、コンクリート内部の鉄筋や配管、空洞など電気的な性質が異なる物体に当たると反射します。その反射波がアンテナに戻ってくるまでの時間から、対象物までの深さ(かぶり厚さ)を測定します。
メリット・デメリット
【メリット】
- 探査対象が広い:鉄筋のほか、塩ビ管などの非金属配管や内部空洞も探査できます。
- 探査深度が深い:電磁誘導法より深い位置まで探査可能で、スラブ厚の測定にも使えます。
- 探査スピードが速い:広範囲をスピーディーに調査することに適しています。
- 二段筋も探査可能:深さの異なる鉄筋(上段筋・下段筋)を認識できます。
【デメリット】
- 水分の影響を受けやすい:コンクリートが湿っていると電磁波が減衰し、探査精度が落ちます。
- 鉄筋径の推定は困難:反射波から鉄筋の太さを正確に特定することはできません。
- 分解能の限界:鉄筋が密集していると、個々の鉄筋を分離しにくい場合があります。
得意なこと
- コア穿孔・アンカー打設の事前調査:鉄筋と配管を同時に探査し、切断リスクを回避します。
- スラブ厚・壁厚の測定:部材の厚さを把握したい場合に有効です。
- コンクリート内部の空洞調査:橋梁やトンネルの健全性調査に用いられます。
電磁誘導法とは?
電磁誘導法は、電磁石の原理(ファラデーの電磁誘導の法則)を応用し、コンクリート内部の金属(鉄筋)を探査する技術です。
原理
探査機のコイルから発生させた磁場がコンクリート内の鉄筋に作用すると、鉄筋に「渦電流」が流れます。この渦電流によって鉄筋から発生する二次的な磁場を検知し、その強さから鉄筋の位置、かぶり厚さ、さらには鉄筋の直径(径)まで高精度に推定します。
メリット・デメリット
【メリット】
- かぶり厚さの測定精度が高い:鉄筋までの距離を非常に正確に測定できます。
- 鉄筋径の推定が可能:鉄筋の直径(D10, D13など)を推定でき、構造計算に役立ちます。
- 近接した鉄筋の分解能が高い:密集した鉄筋も一本ずつ分離して認識する能力に優れています。
- 水分の影響を受けにくい:コンクリートが湿っていても測定精度はほとんど変わりません。
【デメリット】
- 金属しか探査できない:塩ビ管や空洞などは探査できません。
- 探査深度が比較的浅い:一般的に、電磁波レーダー法より最大探査深度は浅くなります。
- 過密配筋の影響:メッシュ筋などが非常に密集していると、測定誤差が生じやすくなります。
得意なこと
- 設計図書との照合:既存建物の配筋状態(径、かぶり厚さ、ピッチ)を正確に把握します。
- 構造耐力計算のためのデータ取得:耐震診断などに必要な基礎データを収集します。
- かぶり厚さ検査:建物の品質管理において、規定のかぶり厚さが確保されているかを確認します。
【早見表】目的別・現場状況別の最適な工法はどっち?
2つの工法の違いを、一目でわかる早見表にまとめました。
比較項目 | 電磁波レーダー法 | 電磁誘導法 |
---|---|---|
主な探査対象 | 鉄筋、非金属管(塩ビ管等)、空洞 | 金属のみ(鉄筋、金属管) |
測定可能な項目 | ・位置(平面、深さ) ・かぶり厚さ ・部材厚 | ・位置(平面、深さ) ・かぶり厚さ(高精度) ・鉄筋径の推定 |
探査深度 | 深い | 比較的浅い |
測定精度(かぶり厚) | 普通 | 高い |
コンクリート含水率の影響 | 受けやすい | 受けにくい |
得意な調査 | ・コア抜き等の設備事前調査 ・スラブ厚測定、空洞調査 | ・配筋状態の詳細調査 ・設計照合、かぶり厚さ検査 |
【こんな時はどっち?】
Case 1:壁にエアコン用の穴をあけたい
→ 電磁波レーダー法 (鉄筋と電気配管などをまとめて探査するため)
Case 2:建物の耐震性を調べるため、鉄筋の状態を正確に知りたい
→ 電磁誘導法 (構造計算に必要な鉄筋径やかぶり厚を高精度に測定するため)
正確な探査を実現するためのポイント
精度の高い探査を行うには、工法選びだけでなく以下の点も重要です。
複数工法の併用
より確実な調査のために、電磁波レーダー法で広範囲の概況を把握し、重要箇所を電磁誘導法で詳細に調べるといった、両者の長所を活かす併用が非常に有効です。
経験豊富な技術者による判断
探査機から得られるデータは単なる波形や数値です。これを正確に解釈し、現場状況に合わせて判断するには、技術者の知識と経験が不可欠です。信頼できる業者選びが、調査の質を大きく左右します。
まとめ:HOLTECHは最適な工法をご提案します
今回は、鉄筋探査の2大工法「電磁波レーダー法」と「電磁誘導法」の違いを解説しました。
電磁波レーダー法
配管や空洞も探せるオールラウンダー。コア抜き前の安全確認に最適。
電磁誘導法
鉄筋のかぶり厚さと径を正確に測るスペシャリスト。構造物の健全性診断に不可欠。
どちらが優れているということではなく、目的と状況に応じた使い分け、あるいは併用が極めて重要です。
「自分の現場にはどちらが適しているかわからない」
「より確実な調査をしてほしい」
このようにお悩みでしたら、ぜひ一度、株式会社HOLTECHにご相談ください。
HOLTECHは、非破壊検査の専門家として、お客様の状況を丁寧にヒアリングし、最適な調査計画をご提案します。鉄筋探査からコア穿孔、アンカー打設工事までワンストップで対応可能です。コンクリート内部の調査は、信頼できるパートナーにお任せください。